シンガポール旅行記(9/12~16)二日目

シンガポール旅行記

二日目
朝。早起きをして地下鉄に乗り込む。
海外の公共交通機関に乗るのはとてもワクワクする。特に観光の中心となる市街地は色んな国の人が乗っている。ガイドブックを熱心に読んでいる、私たちのように旅行をしているのであろう人。恋人、友人と談笑しながら身を寄せ合う人。スマートフォンを握りしめて寝ている人。いろんな目的、いろんな境遇の人を乗せて決まった道を往来する電車。乗客一人一人の物語を勝手に想像するのが楽しい。
シンガポールの地下鉄は飲食が禁止されている。車内にも街にもゴミが少ない。日本のようにワンカップ片手に虚ろな目をした人もいないからどの車両でも安心していられる。スマホで爆音で音楽をかけながら寝ている青年や、めちゃくちゃでかい声で独り言を言っているおじさんはいたけど、まあそんなの日本でも見ないわけじゃないしな。明らかに異様な光景は目にしなかった。

そういえば、一日目の夜、空港からホテルへ向かう道すがら、初めてのシンガポールの地下鉄で、早速失敗したのを思い出した。チャンギ空港とメインの環状線への乗り継ぎ場となるタナ・メラ駅を繋ぐ、たった3駅をひたすらに往来するEast West Lineというのが存在する。タナ・メラ駅で乗り換えをしないと永遠にタナ・メラとチャンギ空港を往復することになる。私達は、そんなことは露知らず、タナ・メラで降りそびれてまた空港へ折り返してしまった。フライト後、大荷物で移動していた私達はそれで結構なダメージを受けた。こうゆう、予想もつかない失敗をして、誰を責めるでもなく「やられた〜」「たしかにあの駅でめちゃくちゃ人降りてたよね」と省みながら笑い合うのが楽しい。
旅に失敗はつきもので、それを笑い合える人と行くか、それをきっかけに気まずくなってしまう人と行くかによって旅の楽しさは大きく左右されると思う。私はかなり抜けていて普通の人より失敗が多いので、そういう人と一緒じゃないと旅は格段に気まずくなる。愛想つかさずに一緒にいてくれる友達は大切にしたい。



さて、シンガポール二日目の行程は、以下の通り。
10時〜15時 ユニバーサルスタジオ・シンガポール
17時〜21時 ナイトサファリ
旅行中の行程の中でも、もっとも活動的で盛りだくさんな一日だった。

まずユニバーサルスタジオ・シンガポール

ここにはUSJにはないアトラクションがいくつかある。ジュラシックワールド内の「ジュラシック・パーク・ラピッド・アドベンチャー」もそのひとつ。円形ボートに乗って激流下りをするアトラクション。6人乗りで、私たち同様、日本人観光客の方との相乗りだった。いわゆるギャルの方で、笑顔がとても素敵だった。
激流下りということで、水の流れるルート(人口の川)を人の乗り降り用に隙間の空いたボートで下っていく。円形のボートはくるくると回りながら下っていくので動きが予想できなくて楽しい。アトラクション搭乗前に、レインコートの自動販売機があった。まあ、濡れるかもしれないけど、日本のジュラシックパーク・ザ・ライドと同じ感じだろうと予想し、レインコートの購入は見送った。
完全に見くびっていた。まさかあんなに濡れるとは。髪の毛から服からびしょびしょになった。気まずいくらい濡れた。晴れていたから良かったが、晴れていない日に乗る場合は是非レインコートの購入をおすすめしたい。清流ならいい。いつから循環しているかわからない人口の川を流れる水を全身に浴びた不快感が嫌なのだ。アトラクションは面白かった。日本に上陸したら人気だろうな。
ちなみに、私たちと同乗したギャルの子はミニスカートを履いていて、その子の向かいに座っていた同期二人はその子のパンツが丸見えだったのでそちらに意識を取られてしまい、正直、恐竜どころでは無かったという。初乗り、海外、ここでしか乗れない、と三拍子揃った特別感のあるライドを凌駕する、ギャルの黒パンツ。視野の狭い私はミニスカの中身に気づくことすらなく、無邪気に恐竜たちとのライドを楽しみました。

アトラクションの待機時間が約1時間ほどあったのだけど、前に並んでいるインド系の外国人のお父さんがとにかくずっと無表情で面白かった。アトラクションに乗る前、恐竜と一緒に写真を取れるスポットがあるのだが、もちろん真顔。なんなら顰め面。しかも、前の人が進んでも前に進まない。息子さんらしき大人の男性と一緒に来ていたが、その同行者の方が列の流れるままに先に行っても進まない。列が進んでいることに気づいていない訳では無い。それでも、自分より前の集団が三段階くらい前に進んで始めて前に詰め始める。もちろんずっと真顔。お父さんの同行者は後半常に誰かと電話していた。
海外に来ると、友人や家族といるのに他の人とFaceTimeしている人をよく見る。あれはなんなのだろう。もしも日本人の友人が急にこの場にいない人に電話をかけ始めたら、その場にいる人も、突然外野から呼び出された側の人も、すごく気まずくなると思うのだけど。
アトラクションに乗ってる間もずっと真顔なのか、その表情の変化を見届けたいと思ったが、搭乗人数の兼ね合いでお父さんと一緒に乗ることは出来なかった。残念だ。あなたの笑顔が見たかったよ。笑顔で激流下りを楽しんだ後、ずぶ濡れスポットで一気に真顔に戻るあなたの表情の変化を見たかった。

他に乗ったアトラクションは以下。
・リベンジ・オブ・ザ・マミィ
(お笑い芸人のザ・マミィを連想してテンションが上がり写真を撮ろうと思ったが他のふたりがぽかんとしていたので断念した)
・トレジャーハンター
(あまりにもシュールで面白みも可愛げもない、無味乾燥なジャングルクルーズのような乗り物。笑顔で乗り込んだ家族連れが無表情になって帰ってくる様子を何組も見た)
・キャノピー・フライヤー
(比較的ミニサイズのコースターアトラクション。見た目のイメージよりは、ちゃんとジェットコースター感があり面白かった)
・バトルスター・ギャラティカ:サイロン

バトルスター・ギャラクティカ:サイロン」は、宙吊りになるタイプのアトラクションで、360度の旋回があったり、外に投げ出されるような遠心力を感じるカーブがあったり、とても面白かった。非常に浮遊感のあるアトラクションなので貴重品は全てロッカーに預けるように注意書きがあった。
ユニバーサル・スタジオ・シンガポールでは、各所に指紋認証式のロッカーがあって、そこに貴重品を預けることが出来る。バトルスター…もその対象アトラクションで搭乗前に全ての携帯品をロッカーに預けるように指示があった。
そこで、私はやらかしてしまった。
アトラクションに並び始めてから、自分のポケットの中で確かな存在感を残すスマートフォンの存在に気づいていた。
まずい。ロッカーに預けるべきだった。すぐに血の気が引いたが、私たちはすでに列に並び始めていた。並び始める前に、列の入り口にて金属探知機を持ったしかめ面の女性スタッフから全身隈無くチェックされた上で列に並び始めている。なんなら、同期のうち一人がそこで引っかかってしまい、「何も持ってないのに…」と首をかしげる同期を茶化した後だった。自分たちの後ろにも続々と人が並び始めている。
ロッカーの指紋認証は、私ではなく別の同期の指紋で行なった。つまり、スマートフォンを新たにロッカーに預ける場合、自分一人ではなく同期も一緒に長く並ぶ列を逆流してロッカースペースまで戻らなければいけない。非常に気まずい。
「乗ってる間、無邪気に手をあげて楽しんだりせず、ポケットの上から携帯をぎゅっと握りしめ続けていればなんとかなるだろう」と自分に言い聞かせて、同期にも報告せずに一人平静を装って列に並び続けた。列は順調に進み、また、その分自分たちの後ろに並ぶ列もどんどん長くなっていく。もう、後戻りはできない。いくしかない。と心に決め始めていたころ、英語でアナウンスが入る。
「このアトラクションでは貴重品を全てロッカーに預ける必要があります。もし貴重品を携帯している方を見つけた場合、登場を拒否する可能性があります。」
冷や汗が背中を伝ったのを感じた。どうしよう。今更戻るわけには。でも、拒否られたら。楽しい旅行の雰囲気に水を差すことになる。
悶々と考えていても埒があかないので、意を決して同期に相談する。盛大に引かれた。
「どういう気持ちで、俺が荷物検査引っかかった時笑ってたん?」「いつから気づいてたの?なんでもっと早く言わなかったの?」
続々と浴びせられる「理解不能」と言いたげな声にウンウンとただ頷くことしかできない。ごめんね。私は本当にこうゆうところがあって。と心で会話するけれど、さらなる批判の言葉が降ってくる事が怖くて口を噤んでいた。なんなら、「いっそ何故、入り口の金属探知機が反応しなかったのか」という疑念が湧いてきて、入り口のしかめ面な女性に腹を立て始めていた。あそこで一思いに止めてくれていれば、私もここまでの気まずい思いをせずに列の入り口とロッカーの往復、約3分間のロスでみんなと気持ちのいいライドを体験することができたのに。と自分勝手な八つ当たりに胸の中を燃やしていた。
アトラクションの搭乗口が近づいてくる。搭乗間近になって、2つのことがわかってきた。
・アトラクション搭乗前に再度、全身の金属探知機を用いた荷物チェックを行われること。
・アトラクションの横に簡易的な荷物置き場があること。
私は同期と話し合って、2つの選択肢を得た。1つは、ちゃんとスタッフに報告して荷物置き場に置かせてもらうこと。2つ目は、スタッフにはスマートフォンを持っていることを絶対に隠して必死にスマートフォンを守って乗ること。ギリギリまで悩み続けていたが、隠してバレた時のリスクを恐れて正直に打ち明けることにした。
搭乗前の荷物チェックを担当していたジャルジャル福徳似の青年に、拙い英語とジェスチャーで間違って持ってきてしまったことを打ち明け、アトラクション横の簡易荷物置き場を指差して「あそこに置かせて欲しい」とお願いする。福徳は困惑した表情で「あそこは鍵をかけることができないし、貴重品を置かせることはできない。帽子とか、サングラスならいいけど、貴重品はお断りしている。」と一生懸命伝えてくれた。
あぁ、隠して乗り込むべきだったと目の前が真っ暗になって何も答えられずにいる私に、福徳は一生懸命「外のロッカーに預けてくれ」とお願いしてくる。ロッカーに預けたら、最初から並び直さずにこの搭乗口まで戻ってきていいから、と。認めるのが嫌で黙っていると、周りの日本人らしきお客様にも声をかけて、「彼女に日本語にロッカーに預けるようにお伝えしてもらえませんか」と英語で懇願し始めている。
ごめんね福徳。理解はできているんだよ。自分の愚かさが受け入れられないだけで、あなたの言いたいことも、自分がしなきゃいけないことも、全部わかってはいるんだよ。困らせてごめんね。
私は同期に謝り、指紋要員の同期と二人で長蛇の列をかき分けて入り口まで戻り、ロッカーまで戻り、スマートフォンを預けて爽快な気持ちで再度、福徳との再会を果たした。福徳は安心したように笑いながらゲートの向こうに通してくれた。騙そうとして、困らせて、ごめんね福徳。非常に真面目で不正のない素敵なスタッフがいるUSSは安心な施設だね。
アトラクションは非常に楽しかった。吊り下がり式のジェットコースターで、急降下、360度旋回、外に投げ出されるような高速カーブなど、確かにかなりの浮遊感を味わうアトラクションだったので、貴重品の携帯は危ないと思った。
そして何よりも、自分の過ちに気づいたらすぐに周りに打ち明けて対応した方がロスは少なくて済むという基本的な学びを再確認することができた。報連相は社会人の基本と言われているけど、日常生活においても、人と一緒に活動する上で欠かせない非常に大切な行動だ。
私は、ジャルジャルの後藤さんが大好きなのですが、この件があってからは福徳さんを見る目が少し変わってきている。真面目で、丁寧で、素晴らしい男だよ、福徳は。

この後、「トランスフォーマー・ザ・ライド」も乗ろうと並んでいたが、並び初めに確認した待ち時間を過ぎても全然乗れる気配がなく、ナイトサファリの集合時間も迫っていたので途中で断念した。



シンガポールでは3種類の動物園が近くに隣接していて、どれも観光地として人気が高い。日中営業していて、とても広く、ショーなども充実していて、日本よりも動物との距離が近く見ることができる「シンガポール動物園」、水辺の動物や魚が充実しており、ボートに乗って園内を回れる周遊ツアーもある「リバーサファリ」、そして動物たちの夜の姿を見ることができる「ナイトサファリ」がある。
3つの動物園全てを回ろうとすると、体力的にも時間的にも厳しいので、私たちはナイトサファリのみを観光することに決めた。
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ロゴはそこはかとなく「BAD BOY」のロゴを彷彿とさせて懐かしい。

ちなみに、リバーサファリは世界でも数少ない淡水魚を中心とした展示を行っていることで有名だが、淡水魚の展示といえば岐阜県各務原市の「アクア・トトぎふ」も非常に素敵な水族館なので、東海にお越しの際は是非観光の候補に入れて欲しい。
aquatotto.com
高速道路の川島SAから直で行けるので交通の便もよく、館内も非常に綺麗、周辺施設も充実している(手ぶらでバーベキューを楽しめる施設などがある)、と休日のレジャーにぴったりです。

ナイトサファリでは、個人観光ではなく現地ツアーを申し込んでいた。市内のホテルからシャトルバスで目的地まで連れて行ってくれて、トラムに乗って園内を周遊できるツアーと、その後のショーまで付いているJTB主催のツアー。夕食付きのツアーではなかったが、お腹も空いていたので現地でビュッフェディナーを楽しんだ。この現地ツアー、JTB以外にも何社か日本語対応で申し込める現地ツアーが用意されているので、個人で参加するよりは若干割高になるが、是非皆さんには現地ツアーを申し込むことをお勧めしたい。
ご飯を終えて、実際にトラムのツアーに乗り込もうとして驚いた。すでにトラムの受付場所には長蛇の列ができていた。現地は平日木曜日の夜だというのに。私たちはツアー会社がすでにトラムと搭乗時間を抑えてくれているので、並ぶことなく受付開始の19時すぐからトラムに乗ってツアーに参加することができた。きっと、個人であそこに並んでいた人たちは、実際にトラムに乗れるまで1時間近く待ち時間が発生していただろう。その苦労を思うと、少し割高でもツアーに申し込むメリットは非常に高いと思う。

トラムで行く園内ツアーは、日本語のガイド音声もあり快適。
さすがに肉食動物や大型の動物は少し遠くからしか見ることが出来なかったが、草食動物の一部は本当に手を伸ばせば触れられるくらいの距離を往来している。
鹿やバクは特に近くで見ることが出来た。広大な敷地内でたまたま近くに寄ってくれるのはとても嬉しい。子供が親に連れ立って歩いている姿や黙々と餌を食べている姿はとても可愛い。
ライオンのスペース内、大きな草食動物がどんと横たわっていて、そこに何頭かのライオンが群がっていた。詳しい説明はなかったが、あれは彼らの餌なのだろうか。日本ではありえないようなダイナミックな光景だった。
像も沢山いて大きかった。木に大きな体を擦り寄せて背中をかいている像もいたりして、自然体な姿が微笑ましかった。
常に揺れたり移動したりしているトラムの上からでは、手持ちのズームレンズカメラではブレてしまって綺麗に写真は取れなかった。でも、一部奇跡的にとれた写真もある。
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猫のように伸びをするメスライオン
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堂々とした姿のオスライオン

トラムで一周した後は、ショーを見ることか出来る。
CREATURES OF THE NIGHT SHOWと称して、様々な動物の習性や身体特徴を紹介しながら動物たちが芸を披露してくれる。また、動物の芸を通して動物保護、環境保護の観点から大切なメッセージを伝えてくれるような、ただ愉快なだけではないステージだった。
洗い物をするアライグマ、逆さ吊りになるナマケモノ、切り株の隙間から餌を探すフェネック、会場の端から端まで一直線に飛ぶフクロウなど、様々な動物の可愛らしい演技を見ることが出来た。
特に可愛かったのが、ゴミの分別をするカワウソ兄弟。カワウソが芸を覚えることが出来るというだけでもかなりの驚きだった。
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ここでも、JTBツアーではツアー参加客分だけ席を用意してくれているので、待ち時間も発生せずにスムーズに席に着くことが出来る。
人気なショーらしく、最後の方に来た客は座れず立ち見している人もいたので、やはりこうゆう流れがスムーズなのはありがたい。

ツアーはここで修了、ショー終了後は流れ解散となる。元気があれば、先程トラムで移動したルートの近くを歩いて散策することが出来る。トラム移動だとじっくり見ることは出来ないし、ある程度距離があるので、歩きの方がゆっくり見れるかもしれない。ただ、私たちはさすがに疲れてしまったのでそのままホテルに帰ることに。

近くの駅までは安いシャトルバスが出ているので、シャトルバスと電車の乗り継ぎで比較的安く移動することは出来た。

盛り沢山の2日目終了。
この日も疲れて即就寝。ホテルに帰ってからの記憶がほぼない。